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2022.12.28 (水)
TOPICSお知らせ

高い専門性・国際性と研究力。社会が求める高度人材を研究科で育成!大学院修士課程がスタート!!

2023年4月、順天堂大学では新たに大学院に保健医療学研究科修士課程を開設します。保健医療学部が誕生して以来4年。大学院をスタートすることになった背景や学びの特長、研究内容などについて、同学部長の代田浩之特任教授、理学療法学科長の藤原俊之教授、副学科長の高橋哲也教授、診療放射線学科長の京極伸介教授、髙橋昌哉教授が想いを語り合いました。

大学院座談会

左から髙橋(昌)教授、京極教授、代田特任教授、藤原教授、高橋(哲)教授

これからの医療界に求められるのは高度な専門性と研究力を持つ人材

代田 近年の高齢化の進展や疾病構造の変化により、理学療法学分野や診療放射線学分野においても、高度な専門性や研究力を備え、最適な保健医療福祉サービスを提供できる人材の育成が急務となっています。例えば、診療放射線分野では放射線技術の進歩と医療機器の高度化、さらにがん診療や脳神経・循環器疾患診療の発展とともに、診療放射線技師の業務範囲も広がっていると聞きます。

大学院座談会_代田特任教授

京極 おっしゃるとおり、X線撮影、核医学検査、核磁気共鳴画像検査(MRI)、超音波画像検査、さらには放射線治療と、診療放射線技師の業務は広範囲に渡り、ますます高度な専門性が求められています。一方で、診療放射線技師を目指す学生への学部教育は4年間しかなく、施設実習も就職活動も卒業研究も4年間で行わなくてはならず、6年間の医学部を経験してきた私から見ると「もう少しゆったりと勉強ができれば……」と感じます。プラス2年の修士課程ができれば、より専門知識や技術を蓄積でき、研究も進められますし、医療界でもそのような高度人材が求められていると感じます。また、私たち大学側は教員に診療放射線技師国家資格と博士号を持つ人材を求めますが、なかなか見つからないんですよね。この点でも大学院は必要だと感じます。

大学院座談会_京極教授

高橋(哲) 理学療法学分野も世界的に高齢化が進み、中枢神経系疾患や運動器疾患に加えて、循環器・呼吸器・腎臓など内科系疾患の患者さんが増加し、それに伴い重複障害者が増えています。このように疾患や障害が複雑化し、医学や医療技術が進歩するなか、複雑な対処ができる理学療法士が求められていますが、国内では診療放射線技師や理学療法士の大学院修士課程は限られており、南関東圏でわずか2校しかありません。そういう意味でも、本学部の研究科は大変重要な役割を担うのではないでしょうか。

大学院座談会_高橋教授

代田 診療放射線学科の髙橋昌哉教授は米国ハーバード・メディカル・スクール、テキサス大学サウスウェスタン・メディカル・センターなどで併せて25年もの海外研究経験をお持ちですが、国際性も含めたお話を伺えますか?

髙橋(昌) ご存じのとおり、博士号のことを英語で「Ph.D.(Doctor of Philosophy)」といいます。「Philosophy(フィロソフィー)」とは文字通り「哲学」を指します。なんらかの疾患の症状を目にしたとき、「なぜ、こんなことが起きるのだろう?」「この病気の原因は何だろう?」とロジックを組み立て、「現時点での情報ではこの考え方が理にかなっているだろう」と筋道を立てて考えることは、まさにフィロソフィーです。こうしたものの考え方はどんな世界に進んでも非常に役に立つものです。仮に将来研究者にならなかったとしても、こうした考え方ができることで自分に自信を持ち、生涯に渡って活かせる礎を大学院で培えれば……と思います。

 

AI、イメージング、センサー技術など最先端の学びを研究科で提供

代田 では、それぞれの専攻の教育内容について、お聞かせいただけますか?
 
京極 診療放射線学専攻修士課程の領域は、「医療画像技術学」「診療放射線学」「生体量子科学」の3つです。近年、診断業務にもかなり最新技術が導入されていて、今後の柱となりそうなものに診断補助AIがあります。いくつか実用化されていますが、現状ではまだまだ不充分で、今後技術改良が進めば、セミオートマティックに診断を進めたり、1分1秒を争う救急外来でAIが正しい方向を示唆できるようになると思います。

大学院座談会_京極教授

髙橋(昌) 診断学におけるAIには大きく分けて2つあります。1つ目は診断支援で、画像上人の目には見えない病変の信号をAIにより加工し、はっきりと「検出」可能にするもの。もう1つは、MRIの信号の定量性を保ちながらも撮影時間を短縮しAIが病変の種類や程度を「鑑別」可能にするもの。この2つは方向性が全く異なります。学生には目指すところをしっかり認識してもらい、興味のある方向へ導きたいと思います。
ちなみに、MRIによる分子イメージング法が診断研究領域で話題になっていますが、私は大きなポテンシャルを秘めていると考えています。ただし、実用化するにはより改良が必要で、院生には世界に先んじて開発していく過程に面白さを感じられる研究テーマを提供したいです。
 

大学院座談会_髙橋教授

代田 大変意欲的な研究科になりそうですね。理学療法学専攻はいかがですか?
藤原 理学療法学専攻修士課程には「神経理学療法学」「運動機能制御理学療法学」「運動器・スポーツ理学療法学」「内部機能障害理学療法学」の4領域があり、内臓疾患、運動器、スポーツ、神経と、非常にバランスよく教員が配置されているのが特長です。

大学院座談会_藤原教授

高橋(哲) なかでも「神経理学療法学」と「内部機能障害理学療法学」が核で、本課程では専門性とそれを高める研究を柱としています。近年、生体反応を評価するさまざまな技術が進歩しました。例えば、センサー技術がその1つです。動作を詳細に分析する多次元センサーが非常に小型化しましたし、微細な血流を測定する血流センサーも長足の進歩を遂げています。こうしたセンサー技術とともに、理学療法の評価学も進歩しましたので、これらを活用しながら研究を進める計画です。もちろん、評価した結果を治療に結びつける必要がありますが、そのためのデジタル通信技術や刺激療法(電気・磁気)も発展しています。
私たちはこうした特長ある領域の研究を複数の分野で進めていき、より高いレベルへと持っていきたい、AI解析などにも領域・専攻横断的に対応したいと考えています。

 

学科内の領域連携はもちろん、医工連携、産学連携による研究を!

代田 理学療法学専攻からも最先端のお話を伺うことができました。こうした研究にはアカデミアはもちろん、企業との連携がキーになりますね。
高橋(哲) おっしゃるとおりで、医工連携・産学連携・産官学連携を進めていきます。私たち順天堂のリソースへの企業側のニーズは非常に高いと、つねづね感じます。理学療法のさまざまな技術や革新的なテクノロジーを患者さんへの精度の高い治療に結びつけていかなければなりませんし、それがひいては産業界の発展にもつながるのではないでしょうか。

大学院座談会_高橋教授

京極 診療放射線学専攻でも、いろいろなシステムの医療器具メーカーとタッグを組んで、機器開発を進めていく計画です。もちろん、大学の実習棟でも多彩な機器を持っていますが、人体に対しては照射できないので附属病院と協力していく方向です。
代田 放射線機器の開発は大手メーカーはもちろん、ベンチャー企業が活躍する領域ですから、大学としても活発に連携していきたいですね。研究開発が楽しみな分野です。髙橋昌哉先生はMRIの新しい撮像法の開発を手がけておられますが、新機器開発について、どんなご意見をお持ちですか?

大学院座談会_代田特任教授

髙橋(昌) 私たちはMRIの新しい診断法の確立に目標を置いています。私も順天堂に入職してよりわかったのですが、様々な分野において、順天堂には高いレベルの基礎研究もあり、さまざまな研究の素材が存在します。診療放射線分野に最も近い1つは、なんといっても理学療法学分野です。理学療法学分野の研究者とコラボレーションして、1つの評価法を確立する。すると、理学療法の方々はその評価法でしか得られない治療効果の情報を把握できるようになり、それをきっかけにより良い治療効果をもたらす機器の開発研究も発展していくのではないかと考え、機会を探っているところです。

大学院座談会_髙橋教授

藤原 私たち理学療法学分野が持つ手段は、どうしても筋肉・関節・筋力・電気生理などのファンクションになります。そこに診療放射線学分野のイメージングが加わると、形態学的な部分やファンクショナルな部分をより細かく見ていくことができます。例えば、より効率的なトレーニング法について、今までは「パフォーマンスが上がったからOK」としてきましたが、その背景にあるメカニズムの解明から新しい治療法を開発していくことも可能になるかもしれません。今までの理学療法学分野に不足していたものを補えるわけで、そういった意味では大学院で放射線療法分野とコラボすることで、ブレイクスルーができるのではないかと期待しています。

代田 理学療法学分野の最新の研究についても教えていただけますか?
藤原 近年、自律神経を外から刺激することにより、内臓や血流の動きをよくするエレクトロシューティカルという分野が注目を集めています。これまで「健康のためには“歩く”ことがよい」と言われてきましたが、「なぜ“歩く”ことがよいのか?」については、本当のところわかっていません。そこで私たちは今、歩行と同じ刺激を与えたとき、同じように循環反応や内部応答が変化するのか、研究を進めています。実は末梢神経や筋肉は歩行と同じ刺激を与えると、ある程度機能が回復することがわかっています。それならば、脳や神経の働きや内部機能についてもよくなる可能性があるのではないか。究極を言えば、リハビリをしなくても、運動機能を保てる可能性があるのです。例えばVRのような視覚的な錯覚と、脳やせき髄の刺激を合わせることで、実際には動いていないのに動いているような錯覚を与えることができ、それによりいろいろな面で改善が期待できます。これなら手術の影響などで身体を動かせない患者さんなどに応用できますし、フレイルに陥る在宅患者さんなどにも解決策を提示できるかもしれません。

大学院座談会_藤原教授

代田 「歩行」は保健医療学科のキーワードですね。医学部の文京ヘルススタディともコラボレーションして、「歩行」のデータベースもかなり充実してきましたし、これを解析して予防医学に役立てる構図もできつつあります。とても期待できる分野です。

 

研究に国境はない
今後ますます海外共同研究や交流が進む

代田 海外との連携や国際交流についてはいかがですか?

髙橋(昌) 日本は臨床研究では非常に大規模なものがあり、世界をリードしていますが、新しい診断法を創り出す部分は少々立ち遅れています。現状、各メーカーの技術者に負う部分が海外よりも大きいので、国内メーカーを巻き込んだグローバルな産学連携は非常に重要です。

代田 今、髙橋先生がリードされている撮像法の開発は日本のMRI領域を世界レベルに引き上げる可能性があるわけですね。理学療法学専攻の海外連携はいかがでしょうか?
高橋(哲) やはり理学療法学は実学ベースですので、患者さんを目の前にしていかに現象や障害を捉えて解き明かしていくか、が中心となります。海外との連携ではアジア諸国ではまだまだ理学療法が発展途上で、日本に留学して学びたい人が多いので、今回研究科ができたことで私たちも海外の理学療法士と学べる機会が増えていくと思います。また、通信技術の発達もあって、今後はさまざまな形態で海外との共同研究も進むはずで、研究科では国際共同研究を最大の特長にしたいと考えています。

大学院座談会_高橋教授

代田 私たちは学部教育でも海外研修などで学部間連携をしてきました。海外の研究者とも活発に情報交換してきましたし、今後は院生の海外交流も進むでしょうね。
京極 これまでも国際シンポジウムを開催し、各国の研究者や学生がどのようなことをされているのか、情報交換しながら刺激をいただいてきました。コロナ禍で一時的に人の行き来が止まりましたが、今後はもっと活発化し、よりインターナショナルになっていくのではないでしょうか。

大学院座談会_京極教授

髙橋(昌) そもそも研究には国境はありません。学生の皆さんには日本と海外の研究に垣根は存在しないことを理解していただきたいです。ただ、私もそうだったのですが、海外に出るまではなかなかイメージがつきませんよね。そこで院生には私たちの国際共同研究に直接携わり、自分がその一員であると感じていただきたいと考えています。

大学院座談会_髙橋教授

医学部・附属病院と密に連携
医療系企業の多い立地も有利

代田 最後に順天堂の特長や強みをお話しいただけますか?
藤原 私たちの強みは理学療法学領域の主要な分野に優れた教員がいること。すぐ隣に医学部があり、つねに連携していること。計約3,000床にも及ぶ附属病院があり、リサーチフィールドが潤沢であることです。理学療法の臨床研究は実際の患者さんとともに行うことが非常に重要ですので、ダイレクトに医学部・病院・患者さんと研究ができることは大きなメリットです。

大学院座談会_藤原教授

京極 それに医学部や看護学部にも研究科があるので、人材交流や共同研究も容易ですね。

髙橋(昌) 私は医学部の放射線科の教員を併任させてもらっていますが、保健医療学部と医学部は本当に垣根が低いですね。これは医学研究推進にとってすごい強みだと思います。

藤原 卒業生が全国各地の医療機関にいらっしゃることも大きいですね。地域の医療機関と協力して大きな研究ができるのは、他大学にはない強みです。
代田 附属病院群の中に診療放射線機器を多数持っており、症例が多いこと、画像の豊富さ、データベースの大きさも強みですね。さらに順天堂のある文京区の立地は、国内でも医療機器メーカーが多いことで知られており、さまざまな企業と組むチャンスがあります。順天堂全体が国際研究に力を入れており、海外の研究施設との人材交流や共同研究が多いことも順天堂の強みですね。

大学院座談会_代田特任教授



 

大学院座談会

<プロフィール>
代田 浩之 先生
順天堂大学保健医療学部 学部長
1979年順天堂大学医学部卒業、医学博士(1992年)。専門は、循環器病学、動脈硬化、冠動脈疾患。総合内科専門医、循環器学会専門医取得。

藤原 俊之 先生
順天堂大学保健医療学部 理学療法学科 学科長
1993年福井医科大学医学部卒業、医学博士(2002年)。専門は、リハビリテーション医学、臨床神経生理学。順天堂大学医学部リハビリテーション医学 教授を兼務。リハビリテーション科専門医・指導医。

京極 伸介 先生
順天堂大学保健医療学部 診療放射線学科 学科長
1985年順天堂大学医学部卒業、医学博士。専門は、画像診断一般、消化器画像診断(CT・MRI)、CAD、フラクタル次元による形態解析。日本医学放射線学会診断専門医、PET核医学認定医。

高橋 哲也 先生
順天堂大学保健医療学部 理学療法学科 副学科長
2001年、広島大学大学院医学系研究科保健学専攻修了。専門は、内部障害系理学療法、心臓リハビリテーション、早期リハビリテーション、デジタルヘルス。日本心臓病学会FJCC、日本心臓リハビリテーション学会認定上級指導士、専門理学療法士(内部障害)。

髙橋 昌哉 先生
順天堂大学保健医療学部 診療放射線学科 
1989年北海道大学薬学部卒業、薬学博士(1996年)。1997年より2018年までペンシルバニア大学、ハーバード大学、テキサス大学放射線科にてPIとして研究に従事。専門は、新規MRI診断法の開発と画像解析。近年、MRI分子・代謝イメージング法の国内第一人者として研究に従事。日本磁気共鳴医学会理事。医学部放射線科兼務。